なぜクロマックスボールは売れたのか その2
ヒットさせるための王道ルール
クロマックスボール販売を決めたそのあとは、とにかく広報活動と営業活動です。
まずはメディアへの挨拶です。
雑誌「anan」や「AneCan」の編集部へも伺いました。
女性受けが良さそうなクロマックスボールでしたから、女性へのアピールは不可欠と判断し、オシャレな雑誌にも掲載してもらおうと考えました。
運を味方に、流れは足で稼ぐ!
色々な女性向け雑誌の中で特に「これだっ!」と感じた雑誌が、女性のためのゴルフファッション誌「Regina」でした。たしか、創刊号か2号目が出版されたばかりの頃でした。
でもこの先、女性ゴルファーへの影響力が高まる雑誌だと、一目で感じました。
まさに「女性にもゴルフを」の流れを実感した時でした。
「ここに載せれば間違いない。」
そう直感した僕は、早速先方まで足を運び、実物を見せながら自分の言葉でしっかりと説明しました。
メディアへのアプローチは、プレスリリースを送付するだけでもよいのです。
ただし、それは市場で流通している商品の場合のみです。
クロマックスボールのように、充分世の中に出回っているとは言えない商品は、実際に相手に触れてもらう必要があります。
まさに百聞は一見に如かずです。
写真や文章で説明するのと、実際に触れて確かめてもらうのとでは、インパクトや評価が大きく変わります。良さが伝わりきらないまま、評価されてしまうのは、あまりにもったいない。そう、僕に思わせるほど、クロマックスボールのファーストインパクトと性能には自信がありました。
仕方なく、プレスリリーだけとなった場合でも、きちんとサンプル商品を手元に届くようにしました。
ショップへの営業周りも同時進行で
メディアへの挨拶周りに並行して、商品を持ってショップ営業にも行きました。
6個入り32パックの箱を20~30箱も車に積めば、重さで後輪が沈みます。
それでも、お構いなしで大阪から名古屋や東京まで遠征しました。
ショップの店長さんや店員さんは、いつでも忙しそうにしています。
そんな忙しい中、突然現れた営業マンが手に持っているのは「オモチャみたい」なゴルフボール。
当然、いい顔はしてくれず、3分の時間をいただくのもやっとでした。
営業マンにとって、たとえ少ない時間でも話を聞いてもらうために大事なのは、第一印象です。
僕の「元プロゴルファー」という肩書きは大いに役立ち、良い印象を持ってもらえたと思います。
さらに、限られた時間の中で商品のアピールポイントを明確に、わかりやすく伝えるには短い言葉でインパクトを与えなければなりません。
クロマックスボールについては「あの谷原秀人さんも、良いとおっしゃっています」という言葉が、効果絶大でした。
事前に谷原選手に実際に使ってもらい、お墨付きを頂いたことが功を奏しました。
最後に、「今やってもらう方が得しますよ」と先行感をお伝えすると、最初は興味が無さそうに不機嫌だった担当者でも、興味を持ちはじめ、最終的には10人中9人がお店に置いてくれました。
メディア戦略とショップ営業を並行した理由
なぜ、メディアへの挨拶とショップ行脚を並行して行ったのか。
そこには私なりの計算がありました。
雑誌に掲載されると商品へのニーズが高まります。
その時に、市場に商品が少しでも出ていないと、急激に高まったニーズは同じスピードで下がってしまうのです。
いわば流行の火を消さないための下地づくりです。
ショップ営業の結果、約100件の小売店と契約することができました。
銀行の方が融資の話を持ってきてくださったのも、ちょうどこの頃でした。
こうやって資金がうまく繋がってくれたことが、この後に続く「プロモーション戦略」という爆発的ヒットのきっかけ作りへと繋がるのです。
この数々の偶然の出来事と良い流れに乗れたことがヒットを生み出した秘密だと思うのです。
次のお話ではプロモーション戦略についてお伝えします。